秋から冬に変わる、そんな時期。
大学卒業をもうすぐ備える二人は既に就職先も決まり、忙しい時期も終えていた。
『直接会って話がしたいんだ。
お前ん家の近くの自販機あるだろ?
あそこまで行くからさ、出てきてくれ』
瑛から一通のメールをもらったは、部屋着に肩掛けを羽織り
息を白くさせながら外へ出た。思ったより寒い。
こんな夜中になんだろうと思うが、変に勘ぐって不安になるのも嫌なので何も考えずに走った。
「瑛!待った?」
「いいや、今来たところ」
「本当に?寒くない?」
「大丈夫。紅茶買ったから
はい、お前のも買っといた」
ジャケットのポケットから取り出した温かい缶紅茶をに渡す。
先に着いていた瑛は自販機の横に腰掛けていた。鼻の先が赤い。
遅くてごめんね。と誤っては瑛の隣に座る。
「どうしたの?急に」
「あー・・んと、話したい事があって」
「うん。ファミレスかどっか入る?」
「いや、いい。すぐ終わる」
すこし照れを見せた瑛はの顔を直視しなかった。
なんだろうという顔をしたは瑛の顔をじっと見る。
「あ、あんまり見んなよ」
「どうしたの瑛。話しにくい事?」
「は、話にくいっつーかさ・・その、提案があって」
「提案?」
「あのさ、卒業したらはインテリアの仕事に就くだろ?」
「うん。瑛は最終的にはお店を持つんだよね」
「当たり前。まぁはじめはサラリーマンからだけど・・」
「でも、一流企業じゃん」
「あたりまえだろ。って話がそれてるんだよ」
瑛のチョップがの頭に当たる。
昔からすこしも変わっていない行動だ。
「痛いー。で、何?」
「・・・・・・」
瑛はの手を取った。
冷たい指先。冷たい空気。
「あのさ・・俺と一緒に・・」
「うん」
「俺と・・暮らさないか?」
「え・・」
「卒業するすこし前から・・一緒に・・」
しばらく言葉が出せないでいた。
瑛と一緒に暮らす。・・・・・・ということは同棲。
確かに付き合ってそろそろ4年で、将来は一緒になろうとお互い決めてはいる。
だが、いつの間にか歳をとって・・・夢は現実になってゆくのだ。
「就職して環境一気に変わるとは思うんだけどさ、
だからこそ・・一緒に暮らしたいんだ。
俺も料理出来るし、ある程度の家事も出来るしさ・・
俺の両親もお前なら良いって言うし」
「え、もう親に話してるの?」
「うん。元々一人立ちしたかったからマンション借りる予定だったし」
「わ、私の親も・・瑛となら良いって言うと思うけど・・」
「・・・不安?」
「嬉しいよ?うん。でも・・いきなりだよ」
「ごめん・・。でも、早く伝えたかったんだ」
「うん・・」
「の両親にも挨拶行きたい。それで・・一緒に部屋探したい」
「うん」
「一緒にいたいんだ。ずっと」
「・・うん。私も」
瑛は自然とを抱きしめた。
自販機の明かりだけが二人を照らしている。
高校の頃からいうと瑛はまた身長が伸びたし、は髪が伸びて大人っぽくなった。
そして本当に大人になるんだろう。
そうしたら結婚して、一緒に暮らしていく。
未来の事を口には簡単に言えるけど・・・実際はもっと大変だろう。
でもこの相手ならきっと上手くやっていける自信も信頼もあったのだ。
「子供は・・3人以上がいいな」
「3・・・はまだしも4人は多くないか?」
「でもさ、今時老後の面倒見てくれる子供って少ないと思うから、
一人に負担させるよりも3,4人で分担させてあげたほうがいいと思うの!」
「超現実的だな・・」
「でも養育費がさ・・だから、私も仕事しながら子育てする!」
「うん・・頑張れ」
「お父さんも頑張ってね?」
「ああ。愛する妻と子供の為に頑張る」
瑛は将来自分の店を持つのが夢だが
「でね、いつか瑛のお店で・・私と自分の娘とお店を手伝うの」
「いいな。それ」
きっと自分達の娘ならさぞ美人になるだろうと思いつつ、未来の自分達を想像する。
大きな喧嘩もいっぱいあるだろう。苦労もいっぱいあるだろう。
でも
「絶対幸せにする」
「うん。これからもよろしくね」
「ああ。
・・・・・・なんかプロポーズした気分」
はその通りだと顔をすこし赤くして・・幸せそうに笑う。
瑛もその横で照れながら笑っていた。
佐伯。それは幸せな名前なのだろう。